About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン)、PP Møbler(PPモブラー)Year: 1950
Material: Oak, Beech, Teak, Birch, Fabric, Leather, Wool, Sheepskin, Horsehair, Cotton
Size: AP16 W70 × D72 × H82 cm / SH36 cm、PP16 W73 × D76 × H84 cm / SH42 cm
Story
AP16(PP16)イージーチェアは、1950年代にハンス・J・ウェグナーが生み出したデザインのひとつであり、彼の「有機的な機能美」の理念を体現しています。直線と曲線を巧みに組み合わせたフレームは軽快でありながら力強さを備え、アームと座面、脚部がシームレスに結合する構造は木工技術の精緻さを示しています。当時のAPストーレンによる製造では、オークやチークといった堅牢で美しい木材が用いられ、内部には十字型スプリングを組み込むことで柔らかな座り心地が確保されました。外観はゆったりとした安定感を持ちながらも引き締まったプロポーションで、張り地は布や革、ウールなど幅広く選択でき、インテリアや用途に応じて多彩な表情を見せる椅子でした。
このデザインはその後、ウェグナーと長年の協働関係を築いたPPモブラーによって「PP16」として復刻されました。PPモブラーはウェグナーのオリジナルデザインを忠実に継承しつつ、現代のクラフトマンシップでさらに洗練させています。内部構造には背もたれの内部スプリングと座面の吊り下げ型スプリングが採用され、さらに馬毛と綿を充填することで通気性や耐久性、そして長時間座っても快適さを損なわない構造を実現しました。こうした工夫により、PP16は単なる復刻ではなく、ウェグナーの理念を守りつつ現代的な生活に調和する進化版のイージーチェアとして位置づけられています。
AP16はオリジナル生産時代のクラフトマンシップと素材の美を伝える歴史的存在であり、PP16は現代の職人技術によって生き続けるクラシックです。両者は異なる文脈でありながら同じ哲学を共有し、時代を超えて愛され続ける椅子として、ウェグナーの不朽の遺産を今日に伝えています。
