AP29(PP120) Stool | スツール


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン) / PP Møbler(PPモブラー)
Year: 1954
Material: Teak,Oak, Ash, Cherry, Walnut
Size: W66 × D40 × H42 cm


Story

AP29スツールは1954年に誕生し、ハンス・J・ウェグナーの代表作であるAP19「パパベアチェア」の伴侶として設計されました。当初はAP Stolen社によって製造され、1977年の同社閉鎖後はPP Møblerが生産を継承し、今日ではPP120の名称で製造が続けられています。

このスツールの最も特徴的な要素は両側に取り付けられたハンドルです。これは視覚的なアクセントであると同時に、持ち運びや移動を容易にする実用的な意図を持ち合わせています。この細部には「有機的機能主義」と称されるウェグナーの思想が表れており、家具は美しくあると同時に人間の生活を支える道具であるという哲学が具現化されています。

AP29(PP120)はパパベアチェア専用に設計されたにもかかわらず、PP Møblerが製造する他のラウンジチェアとも自然に調和します。PP19やPP124、PP530などとの相性は特に良く、フットスツールとしてだけでなく、サイドチェアや簡易的なテーブルとしても活用可能です。この多用途性は、家具を「暮らしに寄り添う存在」として構想したウェグナーの思想を明確に物語っています。

素材にはデンマーク家具で定番のオークやアッシュが用いられ、現行モデルではチェリーやウォールナットも選択できます。接合には伝統的な貫構造が活かされ、堅牢で安定感のある仕上がりを実現しています。見えない部分にまで徹底された品質へのこだわりは、ウェグナーが若き日に培った指物師としての技術と精神を示しています。

小さなスツールでありながら、AP29(PP120)はデンマークモダンデザインの理念を凝縮した作品です。控えめな存在感の中に、天然素材への敬意と職人技の粋が宿り、時代を超えて人々の暮らしに寄り添い続ける普遍的な価値を放ち続けています。


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