About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Andreas Tuck(アンドレアス・ツック)
Year: 1950s
Material: Teak, Oak
Size: W186 × D62 × H48 cm(他バリエーションあり)
Story
ハンス・J・ウェグナーがデザインし、アンドレアス・ツック社によって製作されたとされるAT16テーブルは、文献上におけるモデル番号の不一致が指摘されている特異な存在です。既存のカタログにはAT11やAT33、AT303といった番号が確認されていますが、「AT16」という番号そのものは、既知の記録に残されていません。そのため、このモデルは誤植や特殊なプロモーション用の呼称であった可能性が考えられています。
提供された資料と画像から判断すると、AT16とされるテーブルは高さ48cm、幅62cm、長さ85〜186cmのバリエーションを持ち、コーヒーテーブルとして分類できる寸法を有しています。天板と脚部はチーク材またはオーク材で構成され、シンプルで堅牢な構造を示しています。これはウェグナーの「例外的品質をもつ日常の家具をつくる」という理念を体現したものです。
また、画像にはAP Stolen社製のAP16アームチェアが同時に写り込んでいることが確認されています。この点は、当時のデンマーク家具業界の特徴を示しています。ウェグナーは複数の工房と同時に協業していたため、異なるメーカーの製品が同一のカタログに登場することも珍しくありませんでした。デンマークモダンを「統一された美学」として提示する戦略の一環と解釈できます。
デザインとしては、直線的で軽やかなフォルムと、素材の自然な美しさを最大限に引き出す仕上げが特徴です。脚部の接合には木工技術の精緻さが見られ、装飾を最小限に抑えながらも優雅さを保っています。このバランス感覚こそが、ウェグナー作品の本質を示す重要なポイントです。
今日、このAT16とされるテーブルは、文献に乏しいため謎の多い存在ですが、その希少性ゆえにコレクターや研究者の注目を集めています。真正性を確認するためには刻印やラベルの有無を調べる必要があり、今後さらなる調査や比較研究によって位置づけが明らかになることが期待されています。


