About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Andreas Tuck(アンドレアス・ツック)
Year: 1950s
Material: Teak, Oak
Size: W170 × D100 × H73 cm(Extendable to W260 cm)
Story
AT315ダイニングテーブルは、ハンス・J・ウェグナーとアンドレアス・ツックの緊密な協働から誕生した作品です。ウェグナーが追求した「オーガニック・ファンクショナリズム」の哲学を体現し、素材への深い敬意と卓越した職人技が融合しています。長方形の天板と先細りの円柱形の脚は、シンプルでありながら彫刻的な存在感を持ち、機能美と造形美が調和しています。
このテーブルの大きな特徴は、天板下に収納された2枚の拡張リーフによる拡張機構です。通常時は170cmの長さですが、リーフを展開すると260cmにまで延長でき、人数や用途に応じて柔軟に対応します。滑らかな操作性を備えたこの機構は、日常生活における利便性と優雅さを兼ね備えています。
素材にはチーク材またはオーク材が用いられ、当時のデンマーク家具の伝統を反映しています。チークの豊かな木目やオークの耐久性と力強さは、いずれもウェグナーが家具に求めた自然美と永続性を象徴しています。また、伝統的なほぞ組やフィンガージョイントが随所に採用され、接合部をあえて見せることで職人技そのものがデザインの一部として表現されています。
ATシリーズに属する本モデルは、単なる個別の家具ではなく、ウェグナーとツックが共有した統一的なデザイン言語の一端を担っています。AT315はシリーズ後期に位置づけられ、成熟した造形バランスと高い機能性を備えており、ウェグナーのテーブルデザインの集大成のひとつと言えます。
今日、このテーブルは市場に出回る機会が限られており、その希少性が一層の魅力を与えています。公的なオークション記録も少ないため、コレクターや研究者にとっては特に注目すべき存在です。AT315は、デンマーク・モダニズムの黄金期を象徴する遺産であり、シンプルでありながら人間中心的な優雅さを体現した作品として高く評価されています。

