About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Andreas Tuck(アンドレアス・ツック)
Year: 1960
Material: Teak, Oak, Rosewood, Steel, Brass
Size: 幅206 × 奥行90 × 高さ71.5 cm
Story
ハンス・J・ウェグナーがデザインし、アンドレアス・ツック社によって製造されたAT325Aデスクは、デンマーク・モダンの真髄を体現する傑作です。この作品は、ウェグナーのデザイン哲学である「オーガニック・ファンクショナリズム」が進化した形を示し、木材とスチールという異なる素材を調和的に組み合わせることで新たな美学を創出しました。
天板にはチークやオーク、場合によってはローズウッド突板が使用され、脚部にはマットクロム仕上げのスチールや真鍮の要素が組み合わされています。その接合部には木製のサボットが施され、異素材の融合を滑らかに実現している点が特徴的です。中央に配置されたクロスブレースは単なる補強材にとどまらず、軽快で洗練された印象を生み出すデザイン要素として機能しています。
また、両側に備わる引き出しは、実用性を重視するウェグナーの姿勢を如実に示しています。無駄を排した直線的なフォルムと、細部まで行き届いた職人技が融合し、デスクという実用家具を芸術的な存在へと昇華させています。
同時代のヨハネス・ハンセン製「モデル571 アーキテクト・デスク」などと比較すると、AT325Aはより構造的なミニマリズムを志向しており、椅子だけではなくデスクの分野においてもウェグナーの革新性が存分に発揮されていることが理解できます。これは、彼が素材の探求を続け、木材とスチールの融合に自信を持って臨んでいたことの証でもあります。
今日では製造数の少なさから極めて稀少な存在となり、コレクターやギャラリーにおいて高い評価を受けています。その希少性とデザイン的完成度は、単なる家具を超えた文化的遺産としての価値を確立しています。

