About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Andreas Tuck(アンドレアス・ツック)
Year:
Material: Teak, Oak
Size: W77 × D45 × H61.5 cm
Story
AT48トロリーは、ハンス・J・ウェグナーがアンドレアス・ツックのためにデザインした機能的かつ優美なサービングトロリーです。ウェグナーは「椅子の巨匠」として広く知られていますが、この作品は彼がテーブルやキャビネット類のデザインにおいても高い手腕を発揮していたことを示しています。
デザインの特徴は、取り外し可能な上段の天板と、固定された下段の棚を持つ二層構造にあります。上段はサービングトレイとしても利用でき、キャスター付きの脚部と組み合わさることで、家庭や公共空間で柔軟に活用できる実用性を備えています。
素材はチーク材またはオーク材で製作され、当時のカタログにも「teak eller eg」(チークまたはオーク)の記載が確認できます。素材の選択肢を用意することは、デンマークモダン家具の特徴である「多様な住環境への適応」を意識したアプローチといえます。
クラフトマンシップにおいても、ウェグナーの緻密な設計が光ります。脚部の流れるような曲線や、接合部の精巧な仕上げには、彼が家具職人として培った高度な技術と審美眼が明確に表れています。さらに、当時のオリジナル個体に見られる車輪の仕様や摩耗の痕跡は、真正性を判断する上で重要なディテールとなっています。
製造元については、一部資料にポール・イェッペセン社の関与が記されるものの、ATシリーズの一貫した命名とツック社の記録を考慮すると、オリジナルの製造はアンドレアス・ツックである可能性が極めて高いと考えられます。このような歴史的背景は、AT48トロリーを単なる日用品ではなく、デンマークモダンデザインの豊かな物語を語る存在として位置づけています。
