Carl Joseph Schwenn | カール・ヨーゼフ・シュヴェン


Story

カール・ヨーゼフ・シュヴェン(1888-1973)は、20世紀デンマーク美術における独特な位置を占める画家であり、教育者でした。彼の生涯は、画家としての制作と教育者としての活動が並行して展開され、両面において評価を得ています。シュヴェンはデンマーク王立美術アカデミーで学び、その後フランスやイタリアを訪れて印象派や新印象派の影響を吸収しました。アカデミックな厳格さと自由で色彩豊かな表現を融合させたスタイルは、彼の芸術を特徴づけています。

彼の作品の多くはデンマークの風景に焦点を当て、ティスヴィルデやティビルケといった地域の自然を描き出しました。大地の広がりや光の表情を厚塗りで表現する技法は、パストーゾな筆致として知られています。これにより彼の作品は、単なる写実を超えた感覚的で詩的な風景表現を獲得しました。

教育者としては、コペンハーゲン美術アカデミーで遠近法構成を専門に教え、同主題に関する教科書も著しました。古典的な遠近法の厳格な教授を行いつつ、自身の作品では印象派的な自由さを実践しており、この二面性は彼を特異な存在としています。学生たちにとっては、伝統を重んじながら新しい芸術表現を探求する姿が大きな刺激となりました。

彼の作品は主に二次市場で流通しており、美術館などの公的コレクションに収蔵されている証拠は確認されていません。それでも、彼の絵画はコレクターに支持され続け、オークションでは一定の需要を保っています。特に『教授シグリッド・メラーの肖像』(1926年)は、彼の市場価値を示す代表的作品として注目されました。

シュヴェンの遺産は、美術史的評価よりも、個々のコレクターや市場によって支えられてきました。そのため彼の存在は、美術館主導の歴史からは外れる一方で、デンマークの近代美術におけるもう一つの側面を照らし出す重要な事例となっています。


About

Year:1888 – 1973
Place:Aarhus(オーフス) – Copenhagen(コペンハーゲン)
Museum:-


History

1888:オーフスで生まれる
1908:デンマーク王立美術アカデミーに入学
1912:アカデミーを卒業後、フランスおよびイタリアへ留学
1916:署名入り作品を制作し、初期の活動を開始
1920:『ポンペイ』を発表し、新印象派の影響を反映
1923:『花売り』を制作、人物画にも取り組む
1926:『教授シグリッド・メラーの肖像』を発表、オークションで高額落札記録
1927:大作『刈り入れの畑』を制作
1929:『インガ・スタンペス・ペーターセン家族の肖像』を描く
1930:『果物のある静物』を制作
1940:アカデミーで遠近法構成を専門に教える立場を確立
1950:印象派から新印象派へ様式を深化
1961:『アンティグア盆地』を制作
1964:『風景』を発表
1965:『夏の風景』を制作
1968:『公園の風景』を発表、1970年の展覧会出品票が確認される
1970:展覧会に参加し晩年まで制作を続ける
1973:コペンハーゲンで死去


Works

・Portrait of professor Sigrid Møller | 教授シグリッド・メラーの肖像
・Harvesting the Field | 刈り入れの畑
・Blomsterförsäljerska | 花売り
・Pompeji | ポンペイ
・Family portrait of Inga Stampes Petersen and her children Tue and Hanne | インガ・スタンペス・ペーターセン家族の肖像
・Still life with fruits | 果物のある静物
・Summer Landscape | 夏の風景
・Park scene | 公園の風景
・Antigua Basin | アンティグア盆地
・Landscape | 風景
・Signed Carl Schwenn 16 | 署名入り作品(1916)
・Satyr playing flute with reclining nude | 笛を吹くサテュロスと横たわる裸婦

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