About
Designer: Tove & Edvard Kindt-Larsen(トーヴェ&エドヴァルド・キント・ラーセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1954
Material: Beech(walnut-stained), Teak
Size: W65 × D75 × H75 × SH40 cm
Story
FD116ラウンジチェアは、1954年にトーヴェ & エドヴァルド・キント・ラーセン夫妻によってデザインされ、デンマークの工業化家具メーカーであるFrance & Daverkosenによって製造されました。この椅子は、デンマーク・モダンの黄金期を象徴する一脚であり、機能性と軽やかな造形美を兼ね備えています。
特徴的なのは、優雅に弓なりに広がるアームレストと、背面に設けられたスラット構造です。これにより視覚的な軽快さが強調され、従来の重厚な張り込み式家具とは一線を画しています。また、フレームとクッションが分離したルーズクッション形式を採用しており、輸送やメンテナンスに優れた合理的な構造が国際市場で高く評価されました。
素材には、国内市場向けにはブナ材(ウォールナットステイン仕上げ)、輸出市場向けには耐久性と高級感を兼ね備えたチーク材が用いられました。特に北米市場ではチーク仕様が人気を博し、デンマーク家具の輸出拡大を後押ししました。
1954年のミラノ・トリエンナーレにおいてFD116は高い評価を受け、デザイン賞を獲得しました。この受賞は、デンマーク家具が国際的に競争力を持つことを示す画期的な出来事であり、戦後のデンマーク家具産業における輸出戦略の成功を象徴しています。
その後もFrance & Søn、CADOの体制下で製造が続けられ、デンマーク家具産業の変遷を反映するモデルとなりました。今日に至るまでFD116は、キント・ラーセン夫妻の代表作のひとつとして、美術史的・工業史的な重要性を持ち続けています。