FD125 Armchair | アームチェア


About

Designer: Tove & Edvard Kindt-Larsen(トーヴェ&エドヴァルド・キント・ラーセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1958
Material: Teak
Size: W75 × D78 × H77 × SH42 cm


Story

FD125アームチェアは、1958年頃にデザインされたトーヴェ&エドヴァルド・キント・ラーセン夫妻の代表作です。夫妻はカーレ・クリントの教えを受け、機能主義を基盤としつつも、より軽快で優雅な表現を追求しました。本作はその哲学を体現するモデルであり、デンマーク・モダンの国際的普及に大きく寄与しました。

デザイン上の特徴は、背面に組み込まれたV字型のサポートです。これは視覚的に軽やかな印象を与えるだけでなく、背もたれ全体の強度を高める重要な構造要素でもあります。ソリッドチーク材のフレームは繊細に仕上げられ、アームから後脚へと流れるようなラインは建築的でありながら有機的で、空間に開放感をもたらします。

FD125は、France & Sonが採用したノックダウン(分解可能)構造を取り入れており、輸送と輸出の効率を飛躍的に高めました。従来の完成品輸送に比べ、格段に小さな容積で海外市場へ届けることが可能となり、デンマーク家具産業の国際化を象徴する技術革新となりました。

座面と背もたれにはルースクッション方式が用いられ、軽量フレームと高い快適性を両立しました。スプリング内蔵のクッションは快適な座り心地を提供し、張地には高品質ウールやトーヴェ自身がデザインしたテキスタイルが使用されることもありました。素材の温かみと実用性が融合した本作は、家庭用家具としての実用性を強く意識したデザインでした。

さらに、この椅子はFrance & Sonが実現したチーク材の工業化とも密接に結びついています。タングステンカーバイト鋸の導入によってチーク材の大量機械加工が可能となり、FD125のような高品質な家具を世界規模で輸出できる体制が整いました。その結果、FD125はデンマーク・モダンを象徴する「輸出家具」として世界市場で高い評価を受けることになりました。

FD125アームチェアは、美学、構造技術、そして国際輸送戦略の三要素が交差した象徴的な作品です。キント・ラーセン夫妻のデザイン哲学と、France & Sonの革新的な製造技術が融合したこの椅子は、デンマーク家具の黄金期を代表する遺産として今も評価されています。

PAGE TOP