FD128/183 Sofa | ソファ


About

Designer: Grete Jalk(グレーテ・ヤルク)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1960s
Material: Teak, Rosewood, Rattan, Coil springs, Upholstery
Size: W 190.5 × D 79 × H 84 cm(FD183 Sofa) / W 79 × D 73 × H 79 cm(FD128 Chair)


Story

FD128/183ソファシリーズは、デンマークを代表する女性デザイナー、グレテ・ヤルクが1960年代に<a href=”https://denmark-design.com/france-daverkosen/”>France & Daverkosen(France & Son)</a>のために設計した作品です。清澄で直線的なラインと緩やかなアームの曲線が融合し、機能主義と優雅さを兼ね備えた造形を特徴としています。ヤルクの設計哲学は「経済性」と「人間工学」を重視するものであり、FD128/183においてもその思想が明確に表れています。

フレームは主にチーク材やローズウッドといった高級無垢材で構成され、脚部には繊細なテーパー加工が施されています。一部モデルには籐(ラタン)が組み込まれ、視覚的な軽快さと通気性を与えています。内部構造には高品質のコイルスプリングが採用されており、耐久性と快適な座り心地を両立しています。これにより、外見のミニマルな印象とは裏腹に、長時間のリラクゼーションに適した構造的完成度を備えています。

France & Sonが得意としたノックダウン(KD)構造の思想もFD128/183に受け継がれており、輸出市場向けに効率的な輸送を実現していました。こうした工業的背景は、ヤルクが追求した「経済性」を物流面でも支えるものでした。彼女が手掛けたGJチェアのような積層合板の実験的アプローチとは異なり、FD128/183は伝統的な木工構造と工業化時代の生産効率を融合させたデザインです。

1967年の会社売却以降は、Cadoのもとでも生産が続けられ、長期にわたって市場に供給されました。そのため、F&S時代のメタルバッジや「Made in Denmark」スタンプ、Cado期のエンブレムなど、製造時期ごとのマーキングで個体識別が可能です。これらはデザイン史の中での位置づけを明らかにする貴重な資料となっています。

FD128/183ソファシリーズは、戦後のデンマーク家具が直面した「高品質と大量生産の両立」という課題に対し、デザインと工業技術を融合させて解答した作品です。量産体制に適応しながらも、素材の選択や内部構造において妥協せず、普遍的な価値を実現した点で、デンマーク・モダンの輸出戦略における重要な成果といえます。

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