About
Designer: Grete Jalk(グレーテ・ヤルク)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1952
Material: Teak, Rosewood, Upholstery (Fabric/Leather)
Size: W73–78 × D73 × H75–77 cm
Story
FD128チェアは、1950年代初期にデンマークのデザイナー、グレーテ・ヤルクによって設計され、France & Søn(旧France & Daverkosen)によって製造された代表的なラウンジチェアです。本モデルは「モデル128」あるいは「イージーチェア・モデル118」とも呼ばれ、デザイン史の中で複数の名称で言及されてきました。その核心は直線的で明快なチーク材フレームと、厚みのある快適なクッションにあります。
ヤルクはカーレ・クリントの薫陶を受けた後、量産と工業化に適応する家具を積極的に開発しました。FD128は、彼女のキャリアの中で「工業化志向」を代表する作品であり、戦後のデンマーク家具輸出市場における需要に応える形で誕生しました。そのフレームは無駄を省き、機械加工に適した直線的な構造を持つことで、量産性と強度を両立しています。
座り心地の面では、France & Sønの掲げた「高品質」の理念が反映され、クッションにはスプリングを内蔵。これにより、見た目の軽快さとは対照的に長時間の着座にも適した快適性を備えています。また、両面使用可能なクッション設計は、耐久性と実用性を高め、日常生活に寄り添う工夫が施されています。
素材には主にチーク材が用いられ、稀にローズウッド仕様も存在しました。仕上げにはチークオイルが使用され、自然な光沢と木目を際立たせています。張地にはツイードなどのファブリックが一般的でしたが、後年にはレザー張りも選択肢として用意されました。
この椅子は、France & Daverkosen期からFrance & Søn、そしてCADO時代まで長期にわたって生産されました。直線的な構造と量産への適性は、工房の技術的能力とデザイナーの理念が合致した成果でした。FD128は、グレーテ・ヤルクのキャリアを象徴する一脚であり、デンマーク家具の「民主化された高品質デザイン」を体現した作品として高く評価されています。