FD132 Sofa (2-seater) | ソファ(2人掛け)


About

Designer: Sigvard Bernadotte(シグヴァルド・ベルナドッテ)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1953
Material: Beech, Brass, Wool, Leather, Leatherette
Size: W115 × D61 × H82 cm


Story

FD132 2人掛けソファは、シグヴァルド・ベルナドッテが1953年にデザインし、フランス&ダーヴァーコーセンによって製造されたモデルです。本作はアームチェア(モデル132)と並ぶ「FD132シーティング・スイート」の一環として発表されました。幅115cmというコンパクトな寸法により、リビングの補助的な座席やベッドエンド、公共施設のロビーなど、多様な空間に対応する設計となっています。

デザインの特徴は、ベルナドッテが銀器や工業製品で確立した幾何学的で抑制されたラインを木製家具へと応用した点にあります。フレームには堅牢なブナ材が採用され、軽快さと強度を両立しています。また、可動式の背もたれが導入され、角度調整が可能な構造が利用者の快適性を高めています。特に背もたれの接合部に用いられた真鍮製のピンとボールジョイント機構は、家具に高度な人間工学的要素を加えるものでした。

フランス&ダーヴァーコーセンの工業生産体制は、KD(ノックダウン)構造を中心に据え、家具を分解してフラットパック輸送する方式を採用しました。FD132もこの設計思想を体現し、国際輸送に適した製品として生産されました。これにより、1950年代半ばには同社がデンマーク家具輸出の大半を担うほどの成長を遂げる基盤となりました。

張地には、ウール、レザー、そして耐久性の高いレザーレットが用意されました。特にレザーレットはメンテナンス性に優れ、ホテルや公共空間でのコントラクトユースに適した仕様でした。ロンドンのカールトン・タワー・ホテルにも採用された実績は、その実用性とデザイン性の高さを示しています。

FD132の意義は、王室の血筋を持つデザイナーと工業化を推し進めたメーカーとの協働が生み出した、戦略的かつ革新的な成果にあります。ベルナドッテがフランス&ダーヴァーコーセンのために手がけた唯一の家具シリーズとして、このソファは工業化時代のデンマーク・モダン家具の転換点を象徴する存在となりました。

 

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