FD140 f Footstool | フットスツール


About

Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1956
Material: Teak, Walnut, Oak, Leather, Textile
Size: W 60 × D 46 × H 37 cm


Story

FD140 f フットスツールは、フィン・ユールが1956年頃に設計した「ジャパン・シリーズ」の一部として誕生しました。このシリーズは、従来のキャビネットメーカーによる少量生産の枠を超え、国際市場を見据えた量産化を前提に構想された革新的な試みでした。FD140 fはジャパン・チェアやソファと組み合わせることで、統一された美学と快適性を提供する重要な役割を担っています。

ユールの設計哲学の核である「分離の原則」は、このフットスツールにおいても明確に表れています。座面とフレームは視覚的・物理的に分離され、軽快な「浮遊感」を生み出しています。直線的で簡潔な木製フレームの上に柔らかなクッションが置かれる構造は、日本建築の持つ水平性や「間」の美学を思わせるものであり、東洋的簡潔さと北欧モダンの融合が体現されています。

素材にはチーク材が用いられ、France & Son社による革新的な加工技術が量産化を可能にしました。同社のノックダウン方式(KD方式)に適応した構造は、効率的な輸送を実現し、特にアメリカ市場への輸出成功を支えました。FD140 fは、ユールが職人的な一点物から脱却し、国際的デザイナーとしての地位を築く契機となった作品と位置づけられます。

現代では、House of Finn Juhlによって「FJ 5300 ジャパン・フットスツール」として復刻され、ウォルナットやオークを用いた新たな解釈が加えられています。環境的配慮を示すFSC認証木材や、熟練職人による手作業の張り込みといった要素は、オリジナルが持つ精神を引き継ぎつつ、現代的な価値を与えています。

FD140 f フットスツールは、単なる補助家具ではなく、デンマーク・モダンの輸出戦略、日本美学の影響、そして彫刻的な設計思想が融合した記念碑的な作品として、今日もなお国際的に高く評価されています。

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