FD189 Conference chair | カンファレンスチェア


About

Designer: Tove & Edvard Kindt-Larsen(トーヴェ&エドヴァルド・キント・ラーセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1959
Material: Teak, Brass
Size: W64 × D70 × H78 × SH45 cm


Story

FD189 Conference/Dining Armchair は、1959年頃にデザインされた多用途性を持つ椅子です。設計を手がけたのは、デンマーク・モダンを代表するデザイナーデュオ、トーヴェ&エドヴァルド・キント・ラーセン夫妻です。彼らは王立デンマーク芸術アカデミーで伝統を受け継ぎながら、工業化が進む1950年代後半の国際的な需要に対応する家具を生み出しました。

この椅子は、会議用・ダイニング用の双方に対応できる「汎用性」を意図して設計されました。1950年代の北米市場におけるニーズに応えるべく、居住空間やオフィス空間で幅広く使用できるように設計されており、デンマーク家具の輸出戦略において重要な役割を担いました。

構造的な特徴としては、無垢チーク材による堅牢なフレームと、彫刻的に削り出された湾曲アームレストが挙げられます。アームは単なる支持具に留まらず、人間工学に基づいた快適性と視覚的な優雅さを融合しています。さらに特筆すべきは、背もたれの接合部に採用された真鍮製の球体コネクタです。これは単なる装飾ではなく、構造上の強度を高めると同時に、チーク材とのコントラストによってデザイン上の焦点を形成しました。

製造を担ったフランス&ゾーンは、当時デンマークでもっとも工業化を推進していた家具メーカーでした。同社はチーク材の機械加工技術を開発し、複雑な曲線を持つフレームを安定して量産することを可能にしました。そのため、FD189は量産効率と職人的ディテールの両立を実現し、工業化の時代における高品質デザインの象徴と位置づけられます。

今日に至るまで、FD189は「最高水準の大量生産家具」として評価され、チークの経年変化と真鍮の輝きが調和する造形美は、デンマーク・モダンデザインの黄金期を物語っています。

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