About
Designer: Inger Klingenberg(インガー・クリンゲンベルグ), Ross Littell(ロス・リテル)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1950s–1960s
Material: Teak, Rosewood (variant), Leather, Fabric
Size: W38 × D46 × H46 cm
Story
FD194スツールは、デンマークのデザイナーであるインガー・クリンゲンベルグとアメリカ人デザイナーのロス・リテルが共同で設計し、<a href=”https://denmark-design.com/france-daverkosen/”>France & Son</a>によって製造された作品です。1950年代から60年代のデンマーク・モダンデザインを代表する家具であり、機能性と彫刻的な美学を融合させた造形で知られています。
クリンゲンベルグは1958年に自身の事務所を設立し、家具やテキスタイル、ジュエリーの分野で幅広く活躍しました。彼女の代表作であるModel 193チェアに通じる人間工学的な思想は、このFD194にも色濃く反映されています。一方、ロス・リテルはアメリカの「グッドデザイン」運動を背景に、合理性とミニマリズムを追求したデザイナーであり、1960年にコペンハーゲンへ移住しクリンゲンベルグと結婚しました。二人の協働によって誕生したFD194は、北欧の温かみある素材美とアメリカ的な機能主義が融合した国際的なデザインとして位置づけられます。
フレームには高級チーク材が多用され、ローズウッド仕様も一部に存在しました。座面は革やファブリックで仕上げられ、浮遊感のある「フローティングシート」構造を備えています。これは曲げ積層による成形基板と精密な接合技術の組み合わせによって可能となり、大量生産でありながら均一な品質を維持するという革新を実現しました。
France & Sønは伝統的な指物技術を工業生産に適応させた先駆的メーカーであり、FD194の生産も同社の国際的輸出戦略の中で重要な位置を占めました。その後、CADOに継承されても製造は続き、耐久性と美学を兼ね備えた普遍的な作品として評価されています。
FD194スツールは、オットマンとしても単独のロースツールとしても多用途に利用できる設計であり、今日でもデンマーク・モダンの革新性を象徴する家具として語り継がれています。