FD205 Chair | チェア(ラタンバック)


About

Designer: Arne Vodder(アルネ・ヴォダー)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1956
Material: Teak, Rattan, Upholstery
Size: W50 × D55 × H84 cm


Story

FD205チェア(ラタンバック)は、アルネ・ヴォダーが1956年頃に設計し、France & Daverkosen(その後 France & Søn)によって製造されたダイニングチェアです。本モデルは、ヴォダーの「静かなる形態」を体現し、装飾を排した抑制されたデザインの中に、有機的なフォルムと堅牢な構造を融合させています。

最大の特徴は、背もたれに組み込まれた旋回式の籐(ラタン)パネルです。この可動的な背もたれは、着座者の動きに追従してわずかに角度を変え、従来の木製チェアでは得られない動的な快適性を提供します。ダイニングシーンにおける自然な姿勢変化に対応し、エルゴノミクスを意識した設計です。

フレームはソリッド・チーク材で構成され、繊細にテーパー加工された脚部と精密な接合技術によって、軽快さと耐久性を両立させています。籐の編み込みは、熟練した職人による手作業で行われ、機械化された木工フレームとの融合によって、France & Sønが追究したハイブリッド生産モデルを象徴しています。

FD205が登場した背景には、1950年代のFrance & Sønの工業化戦略があります。ヒレロッドに設置された大規模工場を中心に、同社はデンマーク家具輸出の主要拠点となりました。ヴォダーの設計を工業規模で実現し、国際市場に送り出したことで、FD205は冷戦期の「デンマーク・デザインの象徴」のひとつとなりました。

また、ヴォダーはその造形感性と機能性の融合を通じて、公共施設や公的空間にも対応する信頼性ある家具を提供しました。FD205はその代表格として、ホワイトハウスや国連施設、さまざまな大使館・公邸で採用され、デンマーク・モダニズムの国際的評価を高める役割を担いました。現在では、旋回式ラタンバックという革新性ゆえに、ヴィンテージ市場でも非常に高い評価を受けています。

 

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