About
Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1965
Material: Leather, Aluminum, Steel, Laminated wood
Size: W71 × D71–76 × H107 × SH45 cm
Story
FD210オフィス・スイベル・チェアは、1965年頃にフィン・ユールがデザインしたエグゼクティブ向けのオフィスチェアです。本作は、フランス&サンの工業的製造体制とユールの彫刻的デザイン哲学が融合した、後期デンマーク・モダンを象徴する作品です。
ユールは従来、フレームと座面を分離させる「浮遊感」のある構造を追求していましたが、スイベル機能を備えたFD210では、座と背を一体化させる構造が必然でした。その代わりに、背から座へと続く有機的な曲線と、張り地により包み込まれるフォルムによって、独自の彫刻性を実現しています。
シートシェルは薄板成形によって形づくられ、上質なレザーで張り包まれています。アルミニウムとスチールで構成された五つ星ベースにはキャスターが備わり、回転、高さ調整、チルト機能など、現代的なオフィスチェアに求められる機能が搭載されました。こうした機能的構造の一部は、ノルウェーのリング・モーベルファブリックによる特許技術に依存していたことも確認されています。
この椅子は「テクノクラート・グループ」と呼ばれるエグゼクティブ家具の一環として発表され、管理職や役員向けに特化した存在感と快適性を備えていました。ハイバックの背もたれは背骨を支えると同時に、権威ある印象を与える設計でした。
FD210が発表された直後、フランス&サンはポール・カドヴィウスに買収されCADOへ移行したため、製造期間はごく短期間に限られました。その希少性から、今日ではオリジナルがヴィンテージ市場で高い評価を受けています。一方、ハウス・オブ・フィン・ユールによる現行復刻のラインナップには含まれておらず、産業的要素が強い特殊な作品として歴史的価値を保持しています。