FD419 Long Couch | ロングカウチ


About

Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ヴィト&オルラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1950s
Material: Teak, Rattan


Story

FD419 ロングカウチは、ピーター・ヴィトとオルラ・モルガード=ニールセンが1950年代にデザインした3人掛けソファです。製造はFrance & Daverkosen(後のFrance & Son)によって行われ、国際的な輸出戦略の中で重要な役割を果たしました。モデル名に含まれる「FD」は、製造元であるFrance & Daverkosenの頭文字に由来します。

フレームには堅牢かつ美しい木目を持つチーク材が用いられ、背もたれには手織りの籐(ラタン)が張り込まれています。この組み合わせは、工業化時代の合理的な生産と、デンマーク家具が重視した職人技の価値を両立させた特徴的な意匠です。彫刻的に加工されたチークフレームは量産家具でありながら工芸的な質感を維持し、ラタンの背もたれは軽快さと手仕事の温もりを添えています。

FD419に採用された最大の特徴は、ノックダウン式(分解可能)構造です。この仕組みにより国際輸送が容易になり、アメリカ市場を中心に世界へと広がっていきました。特に販売代理店John Stuart Inc.を通じて米国で広く流通し、デンマーク家具の輸出拡大を象徴するモデルとなりました。分解や組み立てのために工夫された接合部は、熟練していない労働者でも現地で容易に組み立てられるように設計されています。

座面の支持にはデンマーク独自のゴムループコイルが用いられ、弾力性と耐久性を兼ね備えています。クッションを取り外すことでフレーム分解がさらに容易になり、輸送効率と快適性の両立を実現しました。この合理性は、戦後の素材科学と工業技術の進展を背景に生まれたものです。

FD419は、France & Daverkosenが開発したチーク材の機械加工技術と、ヴィト&モルガード=ニールセンの設計思想が融合した成果です。職人技と工業化の調和、そして国際市場を意識した合理的な構造によって、ミッドセンチュリー・デンマークデザインの象徴的な作品のひとつとして評価されています。

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