FD510 Side Table | サイドテーブル


About

Designer: Tove & Edvard Kindt-Larsen(トーヴェ&エドヴァルド・キント・ラーセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1955
Material: Teak (solid)
Size: W 76 × D 50 × H 58 cm


Story

FD510は、補助テーブルとしての機能性と、キント・ラーセン夫妻の有機的なエレガンスを両立させた一作です。矩形の天板と四隅の丸脚という明快な構成を基盤に、縁付きのトップが視覚的な精度と実用性を与え、ソファやイージーチェア脇での使用を前提とした高さ設定が空間との調和を生みます。テーパーした脚は量感を抑え、無垢材でありながら軽やかな佇まいを実現しています。

下段の棚は本作の要で、弓なりの側板に細かなスラットを架け渡す構成が、機能としてのマガジンラック以上の造形性をもたらします。籐(ラタン)的な柔らかい曲線を木で置き換えたような印象ですが、ここでは無垢チークの彫刻的加工が選択され、素材の強度と精緻な仕上げが曲線の美しさを支えています。スリムな部材寸法は視覚的な軽快さに寄与しつつ、棚として十分な保持力を確保しています。

素材は当時のデンマーク・モダンを象徴するチーク無垢。適切な乾燥と加工により、安定した寸法精度と耐久性が確保されています。使用とともに生まれる経年変化は、木目を引き立てながら表情に深みを加え、天板エッジや脚先の面取りが触感の滑らかさを高めます。

製造面では、France & Daverkosen(のちのFrance & Son)が確立した工業的加工が品質を担保しました。ノックダウンを前提としたシンプルで強固な接合は輸送効率を高め、分解・再組立ての容易さが国際市場での競争力に直結します。結果として、無駄のない構造はフォームの純度を押し上げ、FD510の端正なプロポーションにつながっています。

FD510は、明快な用途、緻密なディテール、量産技術と職人仕事の均衡という三要素が合流したモデルです。テーブルとしての基礎性能を外さず、下段棚の曲線や天板エッジの処理にデザイナーの意図を凝縮。デンマーク・モダンが重視した人間尺度と素材理解を、工業化時代の合理性の中で高い水準にまとめ上げた、1950年代の代表的サイドテーブルと言えます。

PAGE TOP