FD515 Round Coffee Table | ラウンドコーヒーテーブル


About

Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ヴィッツ & オルラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1956
Material: Teak, Rattan, Brass
Size: W100 × D100 × H50 cm / W99 × D99 × H42 cm


Story

FD515 Round Coffee Tableは、1956年にピーター・ヴィッツとオルラ・モルガード=ニールセンによってデザインされました。通称「ミネルヴァ・テーブル」とも呼ばれ、知恵と芸術を象徴するローマ神話の女神に由来するこの愛称は、芸術性と産業化の融合を体現しています。製造はFrance & Daverkosen(後のFrance & Son)によって担われ、1950年代後半から1960年代にかけて広く生産されました。

デザインの特徴は、直径約1メートルの大きな円形天板と、下部に浮遊感を伴って取り付けられた籐のシェルフにあります。この二層構造は、日常的な収納を可能にし、テーブル表面を常に整理された状態に保つ工夫が施されています。真鍮製のロッドによって吊り下げられた棚は、軽やかな印象を与えるとともに、堅牢なチーク無垢材のフレームとの対比によって視覚的なバランスを実現しています。

また、FD515の大きな革新点は、脚部が取り外し可能なノックダウン構造にあります。この仕組みにより、輸送時にフラットパック化が可能となり、遠隔地への輸出を効率的に行うことができました。1950年代のデンマーク家具産業において輸送コストは大きな課題であり、この合理的な構造は国際的な普及を後押しする重要な要素となりました。

素材には高品質なチーク無垢材が使用され、耐久性と美しい木目、そして時間とともに増す経年変化の魅力を備えています。さらに、籐の柔軟性と通気性が実用性を高め、真鍮の輝きがデザイン全体に洗練された印象を加えています。これらの素材の組み合わせは、1950年代のデンマーク家具が追求した「堅牢性と軽やかさの調和」を象徴しています。

FD515は、France & DaverkosenからFrance & Son、さらにCADOへと工房の体制が変遷するなかで生産が続けられたモデルです。その背景には、デザイン自体が持つ普遍的な価値と、国際市場での高い需要がありました。ヴィッツとモルガード=ニールセンは、製造側の産業戦略を理解した上で設計を行い、技術革新と輸出戦略を融合させることで、デンマークモダンを世界に広める役割を果たしました。

現在でも多くの個体が残存し、適切な修復を経て使用され続けています。堅牢な構造と永続的なデザイン美学を兼ね備えたFD515は、デンマーク・モダンの歴史における傑作の一つとして評価されています。

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