About
Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ヴィッツ&オルラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1954–1956
Material: Teak, Rattan, Brass
Story
FD521 ワイドランプテーブルは、ピーター・ヴィッツとオルラ・モルガード=ニールセンによって設計された、ミッドセンチュリー・デンマークを代表するテーブルです。両者は1944年に共同スタジオを設立し、30年以上にわたって協働を続けました。その成果のひとつであるFD521は、1950年代のデンマーク家具輸出の黄金期において誕生しました。
本モデルの特徴は、堅牢なソリッドチーク材を用いながらも、軽快さを追求した設計にあります。天板には鋭角なナイフエッジが施され、実際の厚みを感じさせずに浮遊感を与えています。彫刻的な脚部の造形と相まって、シンプルでありながら洗練されたモダンな印象を醸し出しています。
構造的な革新として特筆されるのが、ノックダウン構造の採用です。脚部と天板は真鍮製の球体ジョイントによって結合され、強度と美観を両立させながらも分解と再組立が容易に行える仕組みとなっています。これは輸送効率を大幅に改善し、デンマーク家具が国際市場で競争力を持つための重要な要素となりました。
さらに、下段には籐(ラタン)を編み込んだ棚が設けられており、雑誌や小物を置く実用性と、視覚的な軽やかさを同時に実現しています。チークの重厚さと籐の透過性が組み合わさることで、素材のコントラストが際立ち、自然素材の温かみを備えたデザインとなっています。
このテーブルは、France & Daverkosen(後のFrance & Son)の高い工業技術と、デザイナーの合理性と美学が結実した成果でした。特に、チャールズ・フランスによる超硬合金鋸の導入により、硬質なチーク材を大量生産で加工することが可能となり、FD521のような家具が世界中に輸出される基盤が築かれました。
FD521 ワイドランプテーブルは、デンマークモダンが工業化と国際輸出を成功させた象徴的な作品のひとつです。機能と美の両立、そして伝統的素材と革新的構造の融合を体現したこのテーブルは、今日でも高く評価され続けています。