FD531 Occasional Table | オケーショナル・テーブル


About

Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1958
Material: Teak
Size: W175 × D60 × H45 cm


Story

FD531オケーショナル・テーブルは、1958年にフィン・ユールがデザインし、France & Daverkosen(後のFrance & Son)によって製造された作品です。この時期のユールは、ニールス・ヴォッダーとの密接な手仕事による制作から、輸出を前提とした工業生産へと移行しており、本モデルはその過渡期を象徴する重要な成果の一つです。

デザインの最大の特徴は、天板の周囲を縁取る「レイズド・リップ」(立ち上がった縁)です。このディテールは、視覚的にテーブル上の物を額縁の中に収めたかのように際立たせる美的効果と、コップや小物が滑り落ちるのを防ぐ実用性を兼ね備えています。フィン・ユールが提唱した「感覚」に基づくデザイン哲学が、シンプルな構造の中にも明確に反映されています。

脚部はテーパーを施されたスレンダーなプロポーションで構成されており、視覚的な軽やかさを与えると同時に、チーク材の堅牢さを活かした安定感を保っています。天板、フレーム、脚部の接合はそれぞれの要素が独立しながらも調和を生み出しており、家具を「室内建築」の一部として考えるユールの独自の姿勢が示されています。

素材にはソリッド・チークが採用されました。チーク材は耐久性と審美性に優れ、輸出市場を意識した当時のデンマーク家具産業において理想的な素材でした。France & Sonはチーク材の工業生産を可能にする独自の加工技術を確立しており、ユールの彫刻的な要求を満たしながら効率的な大量生産を実現しました。

FD531は、デンマーク・モダンの国際的普及を背景に生まれ、輸出市場で大きな成功を収めたモデルです。現代ではHouse of Finn Juhlによって復刻され、文化的遺産としての価値を持ちながら、当時と同じく高い品質で生産が続けられています。このテーブルは、機能性と芸術性を融合させたフィン・ユールの哲学を象徴する作品として位置づけられています。

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