FD534 Occasional Table | オケーショナルテーブル


About

Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1950s
Material: Teak, steel
Size: W84.5 × D78.7 × H43.8 cm


Story

FD534オケーショナルテーブルは、フィン・ユールがデンマークの家具メーカー、フランス&ダヴァーコセン(後のフランス&サン)との協働によって生み出した作品です。この時期のユールは、ニールス・ヴォッダーと組んで制作した一点物の職人家具から、大量生産と輸出を前提とした産業的デザインへと移行しつつありました。FD534は、その移行期を象徴する重要なモデルです。

デザインの核心にあるのは、ユールが初期から追求してきた「浮遊感」の表現です。ヴォッダー時代には木工の複雑な接合によって実現されていたこの効果は、FD534においてはチーク材と金属材の対比によって達成されています。暗色に仕上げられた金属フレームが視覚的に背景へと退き、天板のチーク材が軽やかに浮かび上がる構造は、工業的制約の中でもユールらしい造形哲学を保ち続けています。

また、FD534はノックダウン(KD)構造を前提とした設計が採用されており、脚部とフレームを容易に分解できる点が特徴です。これは輸出に不可欠な効率的梱包を可能にし、戦後のデンマーク家具産業が国際市場、とりわけ米国市場で成功を収める上で大きな役割を果たしました。

寸法は幅約84.5cm、奥行き約78.7cm、高さ約43.8cmと、コーヒーテーブルとサイドテーブルの中間的サイズに設計されています。この汎用性の高さにより、リビングやラウンジなど多様な空間に調和し、商業的成功を後押ししました。

仕上げにはチーク材特有の温かみと、経年変化によって深みを増す美しさが備わっています。加えて、金属フレームは粉体塗装による暗色仕上げが施され、機械的な冷たさを和らげながらも耐久性を確保しました。結果としてFD534は、産業的効率性と美的洗練を兼ね備えたデザインの到達点として評価されています。

このテーブルは、フィン・ユールが芸術的な家具のデザイナーから、工業化と国際輸出を担うデンマーク・モダニズムの代表的存在へと進化したことを示す、重要なマイルストーンといえます。

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