About
Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1958
Material: Solid teak
Size: W 75 × D 50 × H 50 cm
Story
FD535オケーショナルテーブルは、フィン・ユールが工業化を前提としたデザインへと移行した1950年代後半に生まれた作品です。1958年頃に製造が開始され、フランス&ダーヴァーコーセン(後のフランス&サン)の国際輸出戦略を象徴する家具として位置づけられます。
このテーブルは、天板の長辺に沿って立ち上がった縁(raised lip edges)を持つ「500シリーズ」の一部であり、物の滑落を防ぐ実用性と、軽やかな彫刻的美学を両立しています。特に日本美術や建築からの影響が感じられる造形は、ユールの他の代表作と共通する国際的なインスピレーションを示しています。
脚部は先細りの角柱状にデザインされ、全体に浮遊感を与えます。この軽快な印象は、家具が空間を圧迫しないというユールの建築的配慮を反映しています。また、天板の縁は無垢のチーク材から削り出されており、木目が連続するように設計されている点は、工業製品でありながら職人的技術を継承している証拠です。
FD535は、フランス&サンが採用したノックダウン方式(現地組立可能な構造)を持ちながらも、高品質なソリッドチーク材を使用し、輸送効率と品質保持の両立を実現しました。これは、デザインの純度を犠牲にせず、商業的要求を満たすユールの妥協なき姿勢を示しています。
このテーブルはユール自身の自邸にも置かれており、チーフテンチェアの隣に配置されていたことが確認されています。デザイナー本人が愛用した事実は、この工業生産モデルが芸術的価値を持つ「モダンクラシック」として認められていたことを物語っています。
今日では、House of Finn Juhl(Onecollection)によって「500 Table」として復刻されており、オークやウォルナット材を用いながら、当時の意匠を忠実に再現しています。ヴィンテージ市場においても高く評価され、特に1950年代の刻印が残る個体はコレクターからの注目を集めています。