About
Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ヴィート & オルラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1950s
Material: Teak, Rattan
Size: W71 × D52 × H52 cm / SH33 cm
Story
FD555/50 矩形オケーショナルテーブルは、1950年代のデンマーク・モダンデザインの国際的な輸出戦略を象徴する作品です。ピーター・ヴィートとオルラ・モルガード=ニールセンによってデザインされ、フランス&ダヴァーコセン(後のフランス&サン)が製造しました。両者の協働は、デンマーク家具を伝統的な職人技から工業的量産へと導き、世界市場での成功を支えました。
デザインの特徴は、ソリッドチーク材を用いた堅牢なフレームと、軽快さをもたらす籐(ラタン)の下棚です。チークの温かみある木目と籐の透過性が調和し、視覚的な軽さを実現するとともに、輸送効率を考慮した軽量化の役割も担っています。下棚は雑誌や小物の収納に適しており、日常生活に実用性を加えながら、空間に余白を残す設計が意図されています。
このモデルは、FD555シリーズの一部として標準化され、矩形や正方形のバリエーションを通じてカタログに掲載されました。シリーズ化された設計は、工業化と輸出を前提とした体系的なアプローチを象徴しています。特にFD555/50は、ソファやラウンジチェアの横に配置する補助的な家具として設計され、軽快で扱いやすいサイズ感を持ちながらも、存在感あるデザインを兼ね備えています。
Hvidt & Mølgaard-Nielsen の作品は、建築的視点に基づく構造的合理性と、Kaare Klintから受け継いだ機能主義が融合しています。FD555/50でも、直線的で端正なプロポーションと精密な接合技術が反映され、デザインの核心に「構造そのものの美」を据えています。
さらに、このテーブルはノックダウン構造(分解可能な接合)の概念を前提とした製品であると考えられます。輸送と組立を容易にする工業的発想は、デンマーク家具が国際市場において競争力を高める要因となりました。France & Søn がCADOに買収されるまでの過渡期に製造されたこのモデルは、工房と企業体制の変遷を体現する歴史的遺産でもあります。
FD555/50 矩形オケーショナルテーブルは、チークと籐の素材的対比、実用的な二層構造、そして輸出志向の合理主義を統合した作品として、デンマーク家具史における重要な位置を占め続けています。