FD577 Round Coffee Table | ラウンドコーヒーテーブル


About

Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ヴィト & オルラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1950s
Material: Teak, Cane
Size: W100 × D100 × H50 cm


Story

FD577 ラウンドコーヒーテーブルは、1950年代のデンマーク・モダンを象徴する作品です。デザイナーであるピーター・ヴィトとオルラ・モルガード=ニールセンは、建築的な思考と構造合理性を融合させることで知られ、工業化と輸出を見据えた家具づくりを行いました。本作はその代表例であり、視覚的な優雅さと輸送効率を両立させた技術的傑作として位置づけられます。

最大の特徴は、分解と再組立が可能でありながら、完成時には接合部が外観に露出しない精密な構造です。脚部とフレームはキャリッジボルトとワッシャーによって固定され、皿穴加工によって接合面が面一となるよう設計されています。これにより、高級家具にふさわしい美観を保ちながら、輸送や修理の利便性を備えることに成功しました。

さらに、脚部や支持部には積層成形(ラミネート)技術が応用されており、曲線美と強度の両立を実現しています。無垢材では難しい形状を、薄いベニヤの重ね合わせによって可能にし、耐久性と軽量性を兼ね備えた構造が完成しました。

素材面では、当時希少であったチーク材の工業加工を可能にしたFrance & Sonの技術革新が重要な役割を果たしました。タングステン・カーバイド鋸の導入により、従来は難しかったチークの大量生産が可能となり、デンマーク家具の輸出産業を大きく発展させました。加えて、棚部に用いられる籐(ラタン)は軽快な印象を与え、重厚なチーク材との調和によって温かみのあるモダンな表情を生み出しています。

FD577は、デザインと工業生産の完全な融合を示した作品であり、家具が単なる生活道具から国際的な輸出産業の象徴へと進化する過程を体現しています。今日においても、その輸送効率・持続可能性・構造的洗練性は、時代を超えて高く評価されています。

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