About
Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ヴィッツ&オーラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1950s
Material: Teak, Cane (Rattan)
Size: W 75 × D 55 × H 50 cm
Story
FD596 Companion Coffee Tableは、デンマークを代表するデザインデュオ、ピーター・ヴィッツとオーラ・モルガード=ニールセンによって設計されました。このテーブルは、France & Søn(当時はFrance & Daverkosen)によって製造され、ミッドセンチュリー期のデンマーク家具が国際市場に進出するうえで重要な役割を果たしたモデルのひとつです。
本作の特徴は、名前に込められた「Companion(仲間)」という意味合いに象徴される多機能性にあります。単なるコーヒーテーブルではなく、リビングにおける生活の伴侶として、収納やトレイなどの機能を備え、利用者の日常を支える存在として設計されました。
デザインの核心には、Hvidt & Mølgaardが得意とした機能主義と合理性があります。棚部分には籐(ラタン)が張られ、雑誌や書籍を収納できると同時に、通気性と視覚的な軽やかさをもたらしています。さらに、一部のモデルには取り外し可能なトレイが組み込まれ、テーブルとサービング機能を兼ね備えるというユニークな工夫が施されています。
構造面では、ノックダウン式(分解可能)を前提とした設計思想が大きな特徴です。これは輸出家具において重要視された要素であり、効率的な輸送と組み立てを可能にしました。チーク材の堅牢なフレームと精密な接合技術は、フラットパック輸送と完成後の安定性を両立させる革新でした。
FD596はまた、MinervaシリーズなどHvidt & Mølgaardが手がけた他の家具と同じデザイン言語を共有しており、統一されたリビングセットの一部として構想されていたと考えられます。チークと籐の組み合わせは「デンマークモダン」の象徴的な素材選択であり、国際市場における「軽快さと高級感の共存」を具現化しました。
このテーブルは、France & DaverkosenからFrance & Søn、さらにCADOへと工房が変遷する中でも製造が続けられ、国際的に広く普及しました。現在もMoMAなどの美術館に彼らの作品が収蔵されていることは、このテーブルを含むデザイン哲学の普遍的な価値を示しています。
FD596 Companion Coffee Tableは、デンマークモダンの成熟期において、職人技と工業化の要請を調和させた成果として位置づけられ、今日に至るまでその意義を失わないデザイン遺産といえます。