About
Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1950s
Material: Teak,Rosewood,Brass, Steel
Story
ディプロマット・シリーズ・ウォールユニットは、フィン・ユールが1950年代後半にデザインしたシステム家具の一部であり、同シリーズのチェアやデスクとともに発表されました。外交官(Diplomat)の名を冠した背景には、大使館や国際的な公共空間での使用を想定した特別な設計意図がありました。単なる収納ではなく、国際的な環境に耐えうる耐久性と柔軟性を備えたモジュラーシステムとして開発されています。
ユールは、家具を単なる機能的な道具ではなく、空間に浮遊する彫刻的要素として捉えました。ウォールユニットにもその思想が反映され、キャビネットが壁から離れて浮いているかのような軽快な印象を与えます。これは、視覚的な重さを排除しつつ、実用的な収納を可能にするユール独自の美学の成果です。
構造面では、モジュール化された壁面レール、キャビネット、棚板による柔軟な組み合わせが可能であり、外交官の執務空間や会議室といった頻繁にレイアウトが変更される場所での使用に適応しました。各キャビネットは高精度な金具で固定され、繰り返しの組み換えや国際輸送に耐える強度を備えていました。
素材には厳選されたチーク材やローズウッド材が用いられました。内部の箱構造は蟻組み継ぎなどの高度な接合で仕上げられ、引き出しは木製ランナーにより、引き出しは安定した操作性を備えていました。金具はシリーズ共通の優雅さを象徴し、細部に至るまでユールの美学が表現されています。
製造はFrance & Sonが担い、複雑な設計を産業的規模で実現する高度な職人技術と品質管理によって生産されました。Diplomat Wall Unitは、ユールが機能性と彫刻的美学を融合させた代表的な作品であり、デンマーク・モダンにおけるモジュラー収納デザインの到達点を示しています。