MK Bookcase System | モジュール式ブックケースシステム


About

Designer: Mogens Koch(モーエンス・コッホ)
Manufacturer: Rud. Rasmussen(ルド・ラスムッセン)
Year: 1932
Material: Solid oak, mahogany, pine
Size: W76 × D27.5 × H76 cm


Story

モーエンス・コッホ(1898–1992)は、20世紀デンマークデザインにおいて機能主義の理念を最も純粋な形で具現化した建築家の一人です。彼は「デザインとは必要性から生まれるものである」という信念を貫き、形式的な装飾よりも、構造と機能の調和を重視しました。MKブックケースシステムは、まさにその思想を具体化した代表作です。

1928年、自身の自宅における書籍収納の課題をきっかけに発案されたこのモジュールシステムは、1932年にルド・ラスムッセン工房によって製品化されました。オークやマホガニーなどの無垢材を用い、わずか11mmという薄さで構成された正方形のユニットが、その後90年以上にわたり受け継がれています。

モジュールは幅76cm、高さ76cm、奥行き27.5cmの正確な立方比を基準として設計されており、単体での使用から壁面一体のライブラリーまで、自在に構成可能です。特筆すべきは「可逆性(Reversibility)」と呼ばれる構造で、モジュールを180度回転させることで、異なる高さの書棚として機能します。これにより、文庫から大型アートブックまで、多様な書籍を最小限の構造で収納できるようになっています。

ダブテイルジョイント(蟻組み接ぎ)による高精度な接合技術は、薄い無垢材でありながら高い剛性と耐久性を確保します。装飾を排した明快な構造は、家具でありながら建築的な厳密さを備え、コッホの「家具は小さな建築である」という哲学を体現しています。

MKブックケースシステムは単なる収納家具ではなく、時代や空間の変化に合わせて構成を変えることができる「自己成長型の建築的システム」として評価されています。現代ではフレデリシアによって再び製造され、伝統技術を継承する工房スネッカゴーデン(Snedkergaarden)によって生産が続けられています。

 

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