About
Designer: Niels Otto Møller(ニールス・オットー・モラー)
Manufacturer: J.L. Møller Møbelfabrik(J.L. モラー)
Year: 1960s
Material: Rosewood / Teak / Stained Oak
Size: W180 × D104 × H72 cm(Extended: W295 cm)
Story
Model 254 ダイニングテーブルは、ニールス・オットー・モラーが設計し、彼自身が創業したJ.L. モラー工房で製造された、デンマーク・モダンを代表する拡張式テーブルです。モラーは1944年にオーフスで工房を設立し、伝統的なキャビネットメーカーの技術と機能主義を融合させた家具づくりを続けました。このテーブルは、彼の哲学「美と機能の完全な調和」を体現しています。
構造面では、厚みのあるテーパー脚と無垢材のフレームによって支えられ、高い剛性と安定性を確保しています。脚部の接合には伝統的なほぞ継ぎが用いられ、拡張時においても卓越した耐久性を発揮します。モラーの設計は、視覚的な軽やかさを保ちながらも、構造的に堅牢であることに重点が置かれていました。
最大の特徴は、両サイドから引き出して拡張できるドローリーフ構造です。リーフは使用しないときにはテーブル下に巧みに格納され、外観を損なうことなく実用性を高めています。閉鎖時には一体感のあるラインを保ち、拡張時には8〜10名を快適に収容できる機能性を備えています。天板エッジの二重構造が視覚的な厚みを演出し、全体のフォルムをより落ち着いた印象に仕上げています。
素材には、チークやステインオークに加え、ブラジリアン・ローズウッドなどの希少材が使用されました。特にローズウッド仕様は深い艶と独特の木目を持ち、時間の経過とともに美しい経年変化を見せます。これらの素材は、モラーが掲げた「自然素材の誠実な表現」という理念を象徴しています。
J.L. モラー工房は、「組み立てラインを持たない生産」を哲学とし、全工程を熟練職人による手作業で行いました。その姿勢は、1981年にデンマーク家具産業賞を受賞するなど、高く評価されています。Model 254はその代表作として、精密な木工技術と理想的な機能美を両立させた、デンマーク・クラフトマンシップの頂点といえる作品です。