Model 66 Armchair | アームチェア


About

Designer: Niels Otto Møller(ニールス・オットー・モラー)
Manufacturer: J.L. Møller(J.L.モラー)
Year: 1974
Material: Solid Walnut, Teak, Rosewood, Paper Cord / Leather
Size: W56 × D53 × H80 × SH44 cm


Story

Model 66アームチェアは、1974年に発表されたニールス・オットー・モラーの代表的作品であり、J.L.モラー製作所創立30周年を記念するモデルとして位置づけられています。この椅子は同社の公式カタログにおいて「最も製造の複雑な椅子」と記され、デザインと職人技の頂点を象徴する存在です。

モラーは1939年に家具職人としての修業を終え、1944年にアーフスでJ.L.モラー製作所を設立しました。彼は常に「デザインと製造は不可分である」という信念のもと、手作業による品質管理を徹底し、アセンブリラインを導入しない工房体制を維持しました。その結果、同社の家具は量産の時代においても、伝統的木工の精度と温もりを保ち続けました。

Model 66の最大の特徴は、後脚から滑らかに流れ込むように成形されたアームレストです。彫刻的な曲線と堅牢な構造を両立させるため、伝統的なほぞ継ぎや精密な削り出し技術が駆使されています。この複雑な接合構造が、モラーが長年培った職人技の集大成として評価される理由です。

素材はすべて厳選された無垢材が使用され、オーク、チーク、ウォールナット、ローズウッドなどがモデルによって採用されました。木材の選別から研磨に至るまで、全工程を熟練職人が担当し、木目の一貫性と自然な質感を保つための手仕上げが施されています。

座面にはデンマークペーパーコードまたはイタリアンレザーが用いられ、伝統的な「L字釘掛け織り」技法によってフレームに固定されています。この座面構造は、張力を均等に保ちながら長期間の使用に耐えるよう設計されており、デザイン性と機能性が高次元で統合された例といえます。

J.L.モラー社は現在も家族経営を続け、創業者モラーの理念である「品質と職人技の完全な統合」を受け継いでいます。Model 66アームチェアは、その理念の頂点として、今日でも国際的なコレクターや美術館から高く評価され続けています。

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