About
Designer: Niels Otto Møller(ニールス・オットー・モラー)
Manufacturer: J.L. Møller Møbelfabrik(J.L. モラー)
Year: 1968
Material: Teak, Oak, Walnut, Paper Cord
Size: W56 × D51 × H80 × SH46 cm
Story
Model 68 アームチェアは、デンマークの家具職人でありデザイナーでもあったニールス・オットー・モラーによって設計されました。彼が率いた<a href=”https://denmark-design.com/jl-moller/”>J.L. モラー</a>社は、1944年にオーフスで創業され、創業当初から一貫して自社工房内での製造を維持してきました。Model 68 は、その哲学を最も端的に表す代表作のひとつです。
モラーは「時代を超越する家具」を目指し、ひとつのモデルを完成させるのに数年を費やすほど慎重な設計姿勢を持っていました。Model 68 アームチェアも例外ではなく、快適性と構造的合理性を両立させるため、人体の動きと木材の性質を細密に分析して形状が導かれています。
構造の核となるのは「特徴的なほぞ接ぎ構造(tenon construction)」です。この接合法は、脚部とフレームを視覚的に軽やかに見せながらも、高い強度と安定性を実現する技術的基盤となっています。補強材を用いずに剛性を確保できるため、フレーム全体を極めて細く仕上げることが可能になりました。この技術的完成度が、モラー作品に特有の繊細な曲線と軽やかな印象を支えています。
素材にはチークやオーク、ウォルナットなどの高品質な無垢材が使用され、仕上げはソープ仕上げやオイル仕上げなど、木肌の美しさを最大限に生かす手法が選ばれました。座面にはペーパーコードや籐(ラタン)が用いられ、手作業によって張られた座面は柔軟性と耐久性を兼ね備えています。
J.L.モラー社の工房では、創業者の哲学に基づき、すべての製造工程を社内の訓練を受けたキャビネットメーカーが担当しています。この徹底した品質管理体制は、製造数を制限する結果となりながらも、完成品の精度と美しさを保証しました。1981年にはデンマーク家具賞を受賞し、伝統的な職人技と現代技術の統合が高く評価されています。
Model 68 アームチェアは、見た目の軽やかさと座り心地の確かさを両立させた、モラーの哲学の結晶です。デザインの完成度、構造的耐久性、素材への敬意、そして製造体制の完全性が一体となったこの椅子は、デンマーク・モダニズムの理想を最も純粋な形で体現しています。