Model 75 Dining Chair | ダイニングチェア


About

Designer: Niels Otto Møller(ニールス・オットー・モラー)
Manufacturer: J.L. Møller Møbelfabrik(J.L. モラー)
Year: 1954
Material: Teak / Oak / Mahogany / Beech, Paper Cord or Rattan
Size: W 50 × D 47 × H 75 × SH 43–44 cm


Story

Model 75 Dining Chairは、1954年にニールス・オットー・モラーによってデザインされ、デンマーク家具黄金期の象徴的存在として位置づけられています。モラー自身が職人出身であったことから、この椅子には設計段階から製造現場まで一貫した理念が通底しており、素材、構造、仕上げのすべてにおいて妥協のない完成度を実現しています。

そのフォルムは極めて流麗で、背から脚にかけての一体的なラインが空間の中で静かに調和します。背もたれの緩やかなカーブは着座者の背を自然に支え、短時間の食事から長時間の談話まで快適な姿勢を保ちます。座面高は一般的なヨーロッパ標準よりもやや低く設計されており、幅広い体格に対応できるよう繊細に調整されています。

構造的には、精密な曲木技術と独自の接合方法が組み合わされ、無駄のない強度と美しさを両立しています。特に接合部の仕上げは職人技の見せ場であり、構造的な信頼性と視覚的な美を同時に成立させる要素として高く評価されています。

素材の選定にも科学的なアプローチが取られており、チークにはビルマ産の高密度材を使用。オークはドイツのシュペッサート地方から、ウォールナットはアメリカから輸入され、木目や強度が綿密に選別されています。これらの木材は伝統的なバンドソーによって切り出され、経験豊富な職人が木目と方向を見極めながらフレームを構成します。

J.L. モラー社は創業以来「Made in Denmark」を堅持し、現在もオーフス近郊の工場で生産を続けています。この倫理的な製造姿勢は、コスト効率よりも品質を優先するという信念に基づいており、創業者の理念を受け継ぐモラー家の4代にわたる経営の中で脈々と維持されています。Model 75はその象徴として、半世紀を超えてもなお世界中で愛用される普遍的なデザインとして存在し続けています。

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