Model 85 Dining Chair | ダイニングチェア


About

Designer: Niels Otto Møller(ニールス・オットー・モラー)
Manufacturer: J.L. Møller Møbelfabrik(J.L. モラー)
Year: 1981
Material: Oak, Teak, Walnut, Rosewood, Paper cord or Leather
Size: W50 × D51 × H85 × SH44 cm


Story

Model 85 ダイニングチェアは、ニールス・オットー・モラーが自身の工房である J.L. モラーズ・モブファブリックのために1981年にデザインした、彼の生涯最後の椅子です。翌1982年に彼が逝去したことを踏まえると、この作品はまさにモラーのデザイン哲学と職人精神の集大成といえます。彼が長年追求してきた「シンプルで、シームレスで、エレガントな家具」の理想が、最も洗練された形で結実しています。

背もたれは4本の水平スラットをもつラダーバック構造で構成され、緩やかに湾曲したラインが背中を優しく支えます。フレームにはチークやオークなどの無垢材が用いられ、木目の美しさを生かしながらも極めて精密な接合が施されています。脚部間に横貫を持たない構造は、高度なホゾ継ぎとダボ継ぎの技術によって可能となっており、軽やかでありながら抜群の安定性を誇ります。

座面にはデンマーク伝統のペーパーコードが採用され、職人による手作業で編み込まれています。この素材は1940年代以降にデンマークで発展したサステナブルな技法の象徴であり、モラーの作品ではその耐久性と自然な風合いが高く評価されています。

J.L. モラー工房は創業以来、一貫してアセンブリラインを用いず、熟練の職人が手作業で各工程を担当する体制を維持してきました。この独自の生産哲学こそが、Model 85 の完璧な仕上がりを支えています。素材の選定も厳格で、使用する木材は特定の製材所から選び抜かれた最高品質のもののみ。これにより、強度と美しさが世代を超えて保たれます。

モラーの逝去後も、J.L. モラー社は家族経営のもとでその哲学を継承し続けています。現在は孫娘キルステン・モラーが経営を引き継ぎ、創業当時と変わらぬ職人技と品質基準のもとで製造が続けられています。Model 85 は、単なる家具ではなく、デンマーク・モダンの理想とクラフトマンシップの永続的な象徴として、今もなお世界中で愛される存在です。

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