JH521(PP521)Peacock Chair | ピーコックチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)PP Møbler(PPモブラー)
Year: 1953
Material: Oak, Ash, Cherry, Walnut, Paper cord, Leather, Fabric, Natural fibers
Size: W89 × D86 × H100-102 cm / SH35.5 cm


Story

ハンス・J・ウェグナーが1947年にデザインした木製のピーコックチェア(JH-550/PP550)は、英国の伝統的なウィンザーチェアを現代的に再解釈した作品でした。その特徴的な放射状の背もたれは、同時代のフィン・ユールによって「孔雀の羽根」のようだと評され、ピーコックチェアの名で知られるようになりました。背のスピンドル中央が平らに削がれ、肩甲骨に沿うように設計されている点は、ウェグナーの人間工学的配慮を象徴しています。

 

1953年、ウェグナーはそのアイコン的なデザインをさらに進化させ、布張り仕様のピーコックチェアを発表しました。これがJH-521(ヨハネス・ハンセン製)、および後にPP-521(PPモブラー製)として知られるモデルです。外観は原型の造形を受け継ぎつつ、座面と背もたれを布や革で覆い、より柔らかく、贅沢で快適な座り心地を実現しました。内部には亜麻繊維、綿、ジュートストラップ、ヤシの葉、馬毛などの天然素材が使用され、使用とともに経年変化を楽しめるよう設計されています。首やアームレスト部分には革が使われ、触感と耐久性を両立させています。

 

この布張り版ピーコックチェアは1953年と1955年のキャビネットメーカーズギルド展に出品され高い評価を受けましたが、その構造が非常に複雑で製造コストが高かったため、ヨハネス・ハンセンによる製造例はごくわずかにとどまりました。現在ではPPモブラーがその生産を引き継ぎ、伝統的な職人技を守りながら現代の空間にも調和する作品として提供しています。

 

ピーコックチェアは、彫刻的な造形と人間工学的な快適性、そして天然素材の誠実な使用が融合したウェグナーの哲学を体現する作品です。木製のPP550/JH550と布張りのPP521/JH521という二つの展開を通じ、伝統と革新の間を軽やかに行き来するその存在は、まさにデンマークモダンの象徴的なデザインといえるでしょう。

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