About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)、PP Møbler(PPモブラー)
Year: 1953
Material: Oak, Teak, Pine, Maple, Cherry, Ash, Wenge, Brass
Size: W500 × D500 × H940 mm
Story
バレットチェアは、1953年にハンス・J・ウェグナーによってデザインされた、機能性と彫刻的美しさを融合させた稀有な作品です。デンマーク語で「ジャケットの休息」を意味する“Jakkeens Hvile”の名の通り、この椅子は座るためだけでなく、衣類や小物を美しく整理するために考案されました。背もたれはコートハンガーの形状を持ち、跳ね上げ式の座面にはズボンを掛けたり、小物を収納できるコンパートメントが隠されています。
その着想は、建築学教授ステーエン・アイラー・ラスムッセンやデザイナーのカイ・ボイエセンとの会話から生まれ、就寝時に衣類を最も実用的に収納する方法という日常的課題に対するウェグナー独自の答えとして形になりました。初期の4本脚試作から、より軽快で有機的な3本脚構造へと改良を重ね、1953年のキャビネットメーカーズ・ギルド展で正式発表。王室からの依頼を受けながらも、納得のいく完成形を追求するために2年間改良を続けたエピソードは、ウェグナーの妥協なき姿勢を物語ります。
製造は1953年から1982年までヨハネス・ハンセンが担い、オークやチークを用いた精緻な無垢材加工、真鍮ヒンジ、そして構造美を際立たせるウェンゲ材の接合部など、伝統的なキャビネットメイキングの粋が注がれました。1982年以降はPPモブラーが生産を継承し、PP250として現在も製造。最新のCNC技術と手仕事を融合させ、一貫した品質と多様な木材バリエーションを提供しながら、ウェグナーの意図を忠実に再現しています。
バレットチェアは、座ることを主目的としないウェグナー作品として異彩を放ち、機能的な彫刻として高い評価を受け続けています。その独創性と遊び心、そして時代を超える美学は、今もなお世界中のデザイン愛好家やコレクターを魅了し続けています。
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初期のモデル
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