About
Designer: Ole Wanscher(オーレ・ヴァンシャー)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1951
Material: Teak, Rosewood, Upholstery
Size: W66 × D86 × H88 × SH42 cm
Story
FD167 セネター・ロッキングチェアは、オーレ・ヴァンシャーが1950年代初頭に手がけたセネター・シリーズの一部として発表されました。ヴァンシャーは、家具を「建築の一分野」と捉え、細いフレームと明快なプロポーションにより、軽やかでありながら強靭な構造を実現しました。本作においても、その哲学が凝縮されています。
ロッキングチェアという形式は、揺動運動によって座る人の身体を支えつつ快適な休息をもたらすため、構造には強い精度と耐久性が求められます。FD167は、スリムな脚部と流線的なロッカーを組み合わせながらも、数十年の使用に耐える堅牢さを兼ね備えています。視覚的な軽快さと構造的安定性が高次元で統合されている点が特徴です。
素材にはローズウッドやチークが用いられ、特にローズウッド製の初期モデルは深みのある木目が椅子の造形美を際立たせました。シート部分には独立したクッションが採用され、バネやフォームを用いた内部構造によって人間工学的な快適性が確保されています。張地はオリジナルのシープスキンやレザーのほか、後年には布張りのバリエーションも見られます。
製造を担ったのは、フランス&ダヴァーコセン(のちのフランス&サン)であり、同社はKD(ノックダウン)システムを導入して効率的な輸出を実現しました。FD167も分解・組立が可能な構造を備え、輸送効率と国際市場での競争力を両立させました。デザインと工業的ロジスティクスが融合した本作は、デンマーク家具産業が国際的に成功する象徴的な一例です。
フランス&サンは1960年代後半にCADOへ統合され、その後生産が引き継がれました。ヴァンシャーの作品は現代においても再評価され、カール・ハンセン&サンによって復刻が進められています。FD167 セネター・ロッキングチェアは、ミッドセンチュリー家具の中でも、美学と工業化の要請がもっとも高度に調和した作品のひとつとして位置づけられています。