FD108 Rocking Chair | ロッキングチェア


About

Designer: Ole Wanscher(オーレ・ヴァンシャー)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1950
Material: Teak
Size: W66 × D82 × H92 × SH42 cm


Story

FD108ロッキングチェアは、オーレ・ヴァンシャーが1950年代初頭にデザインし、France & Daverkosen(後のFrance & Son)によって製造された作品です。ヴァンシャーは師であるカアーレ・クリントから学んだ機能主義を基盤としつつ、古代エジプトやギリシャ、18世紀英国の家具研究を通じて培った古典的な優雅さを家具デザインに融合しました。このロッキングチェアは、そうした学術的背景と現代的合理性が結実した象徴的な作品です。

FD108は、ヴァンシャーの代表的シリーズである「Senator Collection」の一部として位置づけられます。シェーカーやウィンザーチェアの系譜を思わせる簡潔な形態を持ちながら、余計な装飾を排した建築的構成を採用し、スリムでありながら耐久性を兼ね備えた構造を実現しています。そのプロポーションは軽快でありながらも彫刻的で、座る人の身体を心地よく支える機能性を備えています。

素材にはチーク材が多く用いられました。高い耐久性と美しい木目を特徴とするチークは、ヴァンシャーが追求した「永続性」の理念に適した素材でした。当時、チーク材の工業加工は困難とされていましたが、France & Daverkosenが導入した最新技術によって大量生産が可能となり、FD108は国際市場へと輸出されました。この技術革新が、同作の商業的成功を後押ししました。

また、FD108の構造には伝統的なほぞ継ぎや精密なダボ接合が採用され、揺動時にかかる力や荷重に耐える強固な骨格が形成されています。ロッキングレールの曲線設計は、人間工学に基づいた最適な揺れを実現し、安定性と快適性を両立させています。クッションは取り外し可能な設計で、当時はスプリングコアと高品質なファブリックが用いられ、視覚的な軽快さを損なうことなく座り心地を高めました。

FD108ロッキングチェアは、デンマーク家具が職人技から工業的量産へと移行した時代を象徴する存在です。ヴァンシャーの古典的エレガンスとFrance & Sonの工業化技術が融合したこの椅子は、戦後のデンマークデザインが掲げた「高品質なデザインを広く人々へ」という理念を体現し、現在に至るまで普遍的な価値を持ち続けています。

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