FD109 Easy Chair | イージーチェア


About

Designer: Ole Wanscher(オーレ・ヴァンシャー)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1956
Material: Teak, Mahogany, Fabric
Size: W67 × D72 × H82 × SH43 cm


Story

FD109 イージーチェアは、1956年にオーレ・ヴァンシャーによってデザインされました。彼の美学は古典的なプロポーションと時代を超えた優美さに根ざしており、FD109にもその特徴が色濃く表れています。特にアームレストの滑らかなカーブや細身のフレームは、軽快さと耐久性を兼ね備えたヴァンシャー独自のスタイルを示しています。

製造を担ったのは、当時デンマーク家具輸出の中心的存在であったフランス&サンです。同社が確立したノックダウン方式と精密な工業的加工技術は、FD109の量産化を可能にしました。結果として、クラフトマンシップの伝統と工業生産の効率性が高度に統合された作品として完成しました。

FD109は、その「スリムな寸法」と「弾力的なフォルム」によって、視覚的な軽快さを実現しながらも、高い耐久性を確保しています。座面や背もたれにはクッションが用いられ、人体寸法学に基づいた設計によって快適な座り心地を提供します。このバランス感覚は、ヴァンシャーが師事したコア・クリントの影響を継承しつつ、彼自身の発展させた美学を体現しています。

素材にはチーク材が多用され、輸出市場における標準仕様となりました。一方で、マホガニー仕様も一部存在し、高級感のある仕上がりが選択されることもありました。工業的生産の中においても、精密なホゾ組みや隠しボルトを駆使した接合が行われており、「数百年の耐久性」を持つと評されたヴァンシャー作品の本質は維持されています。

今日においても、FD109はデンマーク・モダンの二重性を象徴する作品として高く評価されています。伝統的なクラフトと工業化された量産技術の融合は、世界市場におけるデンマーク家具の成功を支え、ヴァンシャーのデザインがいかに普遍的であったかを証明しています。

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